古の播磨を訪ねて~上郡町編 その5
松雲寺のカヤ
11月中旬に、上郡町赤松にある松雲寺のカヤの木を訪ねました。国道2号の有年原の信号を右折して北へ約10㎞。智頭急行線の苔縄駅越しに日本一と言われている法雲寺のビャクシンを遠目に見ながら国道373号を千種川沿いに北上。途中、千種川に沿って半円を描くように大きく右に曲がって、再び北進を始める地点の右側の赤松の集落の少し高台に松雲寺があります。
この松雲寺は、由緒書きによりますと、赤松円心の居城として名高い白旗城があった白旗山麓の栖雲寺(せいうんじ)を継承した寺だそうです。そして、この栖雲寺も円心の次男赤松貞範が建立した寺で、赤松氏との関わりの深さがうかがえる名刹です。
ちなみに、赤松円心(則村:1277~1350)は南北朝時代に活躍した播磨の武将で、智頭急行線の駅名に「河野原(こうのはら)円心」という名がつくほど、地元では名高い英雄です。
さて、松雲寺は、東寺真言宗に属する寺院で、お寺は赤松地区の集落からは一段高くなった台地に石垣を積んで建てられています。参道前に着くと、向かって境内左手にうっそうと茂る樹木が目にはいってきますが、この樹が今回の目的のカヤの木です。
目通り約5.8m、根周り約8.3m、樹高約25m、樹齢は700年以上と推定されています。かつて、落雷に遭ったそうですが、見る限りにおいては、その悪影響もなさそうです。また、これだけの老木になると、空洞化したり、腐朽している箇所があるものですが、そのようなところは全く無く、樹勢も益々盛んな感じを受けました。昭和61年3月に上郡町の天然記念物に指定されています。
実際に樹肌に触れてみると、ほんのりとした温かみを感じ、苔むしている処は、逆に少し冷たさが伝わってきました。その枝ぶりからはまさに生涯現役という感じを受けました。赤松氏の栄枯盛衰を目の当たりにしてきたこのカヤの木ですが、今後もこの高台からここ赤松の集落、そして千種川の流れを見守っていてくれることを願って、松雲寺をあとにしました。