播磨広域連携協議会

播磨広域連携協議会 > コラム・連載 > はりま風土記紀行 > 古の播磨を訪ねて~市川町編 その3

はりま風土記紀行

古の播磨を訪ねて~市川町編 その3

古の播磨を訪ねて~市川町編 その3
岩戸神社

岩戸神社

  播磨国風土記に記載されている現在の市川町に関しての部分は、「神前の郡 堲岡の里・川辺の里」のみと考えられています。二つの里だけと、非常に少ないのですが、「大汝命のウンコの我慢と小比古尼命(すくなひこねのみこと)の堲(はに:粘土)運びの我慢比べ」の話は非常にユーモラスで、播磨国風土記を代表するような説話と言えます。この二つの里に関しては、すでにこの「はりま風土記紀行」シリーズに登場しましたので、今回は播磨国風土記を離れた紀行文になりました。

 10月も半ば過ぎで播磨の秋祭り真っ只中の秋晴れの日に市川町を訪ねました。カーナビで、先ず訪問予定の岩屋神社をインプットしたのですが、表示されませんでした。そこで、とりあえず、播但連絡道の市川南ICで下りて、県道34号線を岡部川沿いに上って行き、市川町上牛尾を目指しました。途中2回道を尋ね、無事岩戸神社の駐車場に到着しました。

 さて、その岩戸神社ですが、樹齢数百年という杉・桧・栢(かや)がうっそうと茂っていました。参道やその両側の玉垣は苔むしていて、お社の南半分を囲むように流れている岡部川の支流の岩戸川は、清流以外の言葉は当てはまらないような渓流で、辺り一帯はひんやりとした空気が漂っていました。本殿後ろには、高さ・幅共にそれぞれ10数メートルもあるかと思われる大きな岩が迫っており、また、本殿南西方向の岩戸川の側にも苔むした屏風のような大岩が立っています。周囲の老木と合致し、せせらぎだけが聞こえてくる神秘的で静閑そのものでした。

 次に、本殿の装飾彫刻ですが、これまた素晴らしいもので、巧妙精緻な力作は、市川町の文化財に指定されています。聞くところによりますと、この彫刻師は今の丹波市氷上町の出身で、日光東照宮の彫刻の流れを汲む彫刻師のようです。

 この岩戸神社にはクマガイソウやエビネその他20種類ほどの山野草を集めた花園があります。なかでも6月中旬に咲く九輪草の群落は素晴らしいもののようです。今回訪ねたときは、多くの野草の茎・葉はほとんど枯れていましたが、来年は、是非その美しい花の時期に訪れたいと思いながら、岩戸神社をあとにしました。